
社長の藤野さんが語る社会をよくするお金の使いかた
第4回本からの学びー『項羽と劉邦』から想うことー
レオス・キャピタルワークス社長の藤野さん。
連載企画の第4回となる今回は、藤野さんが「若い人にぜひ読んでほしい」とおすすめする本や、司馬遼太郎の『項羽と劉邦』から学んだ“戦い方”についてお話しいただきました。

インタビュアー:
tsumiki証券元スタッフ 仲木威雄
若い人たちに伝えたい、
綺麗事じゃないリアルな表現での“投資”
綺麗事じゃないリアルな表現での“投資”
- 藤野さん
- 唐突なんですけど、ものすごくおすすめな書籍があるんです。“投資”というものに興味を持っている人、特に若い人にはぜひ読んでほしくて。
- 仲木
- なんて本ですか?
- 藤野さん
- 『くそつまらない未来を変えられるかもしれない投資の話』(ヤマザキOKコンピュータ著)という本、知っていますか?
- 仲木
- あーー!!それ読みましたよ!
- 藤野さん
- さすが仲木さん。著者がパンク調で語っているのがとても良いんですよね。僕らがそういった口調で語るにはキャラが違いすぎるし(笑)
- 仲木
- 同意見です。彼(著者)の視点で、綺麗事じゃないリアルな表現で『投資』を語っているのが、ものすごく、いい。誰にも気を使わずみんながオリジナルな生き方をし、その一部に投資が“在る”んだよということを伝えてくれてますもんね。若い人たち、特に高校生や大学生の人たちにはものすごくエエんちゃうかな。
- 藤野さん
- 人の心に刺さりやすいですよね。僕もこの本を読んで、「ああ、自分もこういう目線で話さなきゃ」と、強く感じました。
- 仲木
- 著者のヤマザキOKコンピュータさんとはぜひ、なんらかの形でお話ししたいですよね。
- 藤野さん
- はい。このご時世、難しいかもしれないけどぜひ一度お会いしてお話ししてみたいなあって思います。

司馬遼太郎の『項羽と劉邦』から学んだ“戦い方”
- 仲木
- さて、ひふみは運用をスタートして12年。ファンド規模の拡大など様々な環境変化にも柔軟に運用してこられましたね。
- 藤野さん
- そうですねぇ。僕、ファンドの規模が変わっていく中での運用の仕方って、兵法(兵士を扱う方法)に通ずるものがあると思ってるんですよ。
- 仲木
- へえ〜、それは面白い!
- 藤野さん
- 高校生の頃に『項羽と劉邦』(司馬遼太郎著)を読んだ時、登場人物の中の「韓信」という人物に心惹かれました。韓信は元は無名で、最初から評価を受けていた人物ではなかったのですが、自身の才能や力に対して自信を強く持っていた。
「韓信の股くぐり」という言葉が作中に出てくるのですが、これは、若き頃の韓信が悪い輩に絡まれたときに、「お前、俺の股をくぐれ」と命令されるんですよ。命令された韓信は、飄々と股をくぐったんです。その行動を読んだときに「ああ、自分は韓信と似ている」と思いましたね。
- 仲木
- 似ているところとは、どういうところですかね。
- 藤野さん
- 何というのか……自分がすごいか否かというのは、別に他人の評価を気にしなくていいんです。飄々としていていい。悪い輩と喧嘩してああだこうだやるよりも、さらっと股をくぐって済むならそれでいい、って思うんですよね。韓信は、悪者の股をくぐっても自分の偉大さ、自分に能力があるという事実は変わらないと考えていた。つまり、他人からどう評価されようが、それこそ悪者の股をくぐろうが、自分は自分でそれは揺るがないという感覚を持っていたんです。
そういう感覚を僕もまた、子どもの頃から強く持っていた気がするんです。
- 仲木
- 「泥の中にあってもダイヤモンドはダイヤモンド以外の何物でもなく、価値は揺るがない」みたいなことですかね。
- 藤野さん
- そうそう。で、これまた韓信の話ですが、作中で韓信は、蕭何(しょうか)という内務の天才に出会うんです。戦いの場で韓信が小隊長の武将として大成功した際に、蕭何は韓信に対して「このくらいの小勢力をまとめて戦うのが君は得意だね。ところで、君はどのくらいの兵隊を率いて戦うことができるの?」と問うたんです。
その問いに対する韓信の答えは、「多々益々弁ず(たたますますべんず)」でした。
- 仲木
- 「多々益々弁ず」ですか…
- 藤野さん
- これは「多ければ多いほど力を発揮する」という意味なんですよ。
要するに、兵数が多ければ多いほど自分はよりうまく兵を動かして戦うことができると韓信は答えたんです。そしてその答え通り、韓信は100万もの大軍を動かし項羽を破りました。ね、面白いでしょ?
これは、運用にも同じことが言えると思うんですよ。
- 仲木
- なるほど、ファンドに集まる資産額=兵力と考えればいいのか!
- 藤野さん
- そう。つまりファンドに30億の資金が集まっているなら30億の戦い方があり、100億集まったら100億、1,000億なら1,000億の戦い方があるんです。
僕自身、ひふみの運用は1億5,000万からのスタートでした。その時は、そのときの兵力に準じた戦い方をしていたんですよね。
ファンド規模が小さかったときは「こんな小さいファンドで成果が出るわけない」って言われていたんですよ。でも実際結果が出たら、今度は「小さいから結果が出たんだ」って言われて(笑)
でも一理あるんですよ。それは何かというと、小さい資産額で勝つための戦い方を最大限おこなった、ということです。
ですから、例えば今、ひふみは資産額が数千億のファンドとなりましたが、その金額で一番戦える方法をセレクトして戦うまでなんです。これが1兆、2兆と更に大きくなっていくと、ひふみの根本の考えは変わらないけれど、5大要素(火風水土心)に置く兵力を活かした戦い方というのは、今とはまた異なるものに変わっていくはずなんです。それをイメージしていき、資産規模に応じた最適なカスタマイズをしていく必要がある、と思っています。
- 仲木
- 私も大学の時に司馬さんの『項羽と劉邦』を読んでるんだけどなぁ…(笑)