第20回
『社会の制度や仕組みを知ることが、未来の自分をまもるカギになる』
8年間一般企業の管理部門で勤務した加藤千晃さん。
仕事をしていく中で、税や社会保障に関する知識は知れば知るほど驚きの連続だったといいます。そこでもっと世の中の人にその制度について知ってもらいたいと思い、ライフ・リテラシーゲーム を考案。平塚市の優れた起業プランを選定するビジネスコンペの認定を受け、商品化されました。
現在は学校へ出張授業やセミナーをおこないながら、活動をしています。

インタビュアー:tsumiki証券スタッフ 平田
社会の制度や仕組みを学び、命をまもる教材を作る
平田: |
本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。早速ですが、ライフ・リテラシーを立ち上げたきっかけを教えてください。 |
加藤さん: |
ずっと社会の仕組みや、制度を学ぶためのアイデアは持っていました。しかし迷いがあり、自分がアイデアを形にするよりも、誰かが形にしてくれるのではないか?と思っていたんです。けれど、そんな時ある事件を知りました。若いシングルマザーがインターネットでみつけたベビーシッターに子どもを預け、その子どもが殺害されてしまったという事件です。私が一番衝撃を受けたのは、児童扶養手当(ひとり親家庭が申請すると受け取れる手当)の金額が、そのお母さんが子どもを預けてはたらいて得られるひと月のお給料と全く同じだったことでした。そんな大切な制度のことを母親は知らなかったと言っていたのです。その新聞記事をみて、「制度を知らないと命にかかわるんだ」と知り、 命をまもる教材を何としても作らなければならないと考えるようになったのがきっかけです。 |
平田: |
確かにそれはかなり衝撃的ですね。その制度を知っていれば、助かる命だったかもしれません。実際に事業を立ち上げて、不安や苦労もあったと思います。その点いかがでしたか? |
加藤さん: |
本当は当時の仕事をしながら製作した方が金銭面的にも楽でした。しかし休みの日や隙間時間だけでは、ゲームを形として作り上げるまでにすごく時間がかかると思い、退職を決断しました。退職後はすぐに収入を得られるわけではなかったので、派遣ではたらいていました。 |
平田: |
ちなみに、どんなところではたらいていたのですか? |
加藤さん: |
今まで、1社でしか総務関係の仕事をしていなかったので、色んな会社の管理部門の現場や労働環境などをみたいと思っていました。そこで、潜入捜査じゃないですけど、お弁当屋さんなど、今までやったことないような体を使う仕事をしてみたり、有名企業や逆にかなり規模の小さい会社など色んなところではたらいてみたりしました。 |
平田: |
ライフ・リテラシーゲームを拝見して、「どこからこんなにリアルな発想が来ているのか」と疑問に思っていたのですが、実際の経験を通して知ったのですね。 |
加藤さん: |
やっぱり大変だったけど、私としては色んなリアルを学べて面白かったですし、その経験が今もずっと活きているのでとてもよかったです。 |
知ることが漠然とした不安を取り除く
加藤さん: |
お金に関する知識は、学生でも絶対に持っていた方が良いですね。例えば奨学金。中学生に奨学金の話をすると、ものすごく興味を持って聞いてくれるのですが、まず「借金」ということに驚いています。 |
平田: |
確かに現在、奨学金を借りて大学に入学するのが当たり前になっていますからね。 |
加藤さん: |
最近は返済不要の奨学金制度なんかもあったりするのですが、知らない人も多くいます。知識は自分で取りにいかないといけないんですね。 |
平田: |
奨学金は残っている金額に対して金利がかかるわけですから、支払いが遅れてしまうと雪だるまを転がすようにどんどん大きくなってしまいますよね。金利の概念も若いうちからかんたんでいいので、知っておくことは大事ですね。 |
加藤さん: |
はじめから全部知るというのは難しいですが、順序立てて知っていくことが重要だと思います。みんなお金や将来に対して漠然とした不安を持っていると思うんですね。 |

知ることで将来への具体的なアクションにつながる
平田: |
確かに、みえないものを恐れている節はありますよね。 |
加藤さん: |
そのためにはまずは最も身近なお金から知る必要があると思い、ライフ・リテラシーゲームの中にもリアルな給与明細を入れてみました。 しかし、控除されているそれらはどこに払って、どういう仕組みになっているか。それが自分にどのようにかえってくるかを知ることができると、税や保険料が、“とられているものではなく、自分の未来や、今の生活のコストである”とわかります。このようにわかってくると、ひとつ心配ごとが減るわけです。 自分に必要なものや足りないところがみえるようになるので、例えば保険についても「充分だろうか?」「ムダに払っていないだろうか?」などとモヤモヤせず、今よりずっと心の平穏が保てると思います。 |

平田: |
確かに、自分の給与から支払っているものがどこで何に使われているのか、よくわかっていませんでした。土台をしっかりとさせることで、将来自分が何をするべきかわかってきますね。 |
加藤さん: |
私がライフ・リテラシーゲームで伝えたいことの一つに、「税金や保険料などの支払い(負担)と社会保障(給付)などのつながりを理解できるようになって欲しい」というのがあります。 |
平田: |
確かに「自分たちが今の世の中を作っている」という認識を持つことは大切ですね。 |
加藤さん: |
社会保険労務士の資格を取得するなどありましたが、根本的な問題は日本国民ほぼ全員、これらの分野に興味がない、というところにあると気づきました。どうすれば社会保障や政治などについて興味を持ってもらえるのだろうと考えたときに、ゲームにすれば、みんなでワイワイ楽しむことができ、ハードルが下がるのではと思いました。「深く知る」よりも「わかりやすく伝える」方を選びました。そこでボードゲームにして教材を作ろうと考えたのです。 |
平田: |
ライフ・リテラシーゲームを通して、一番伝えたい世代はどのあたりでしょうか? |
加藤さん: |
今は、小学生の子たちに伝えたいと思っています。 |
平田: |
なぜ考えが変化したのですか? |
加藤さん: |
この活動をはじめて、いろいろな場所で教えていくうちに、18歳で学ぶのでは遅いと考えるようになりました。ちょうどその頃、18歳選挙権の法案が通り、連日テレビでも取り上げられていて、私自身もどのくらいの投票率になるのだろうってワクワクしていたんです。でも蓋を開けてみると世間的には高い投票率だったものの、私が思っていたよりは低くて正直がっかりしたんです。 |
平田: |
そうですね。私も結構報道されていたのに意外と低いなと思いました。 |
加藤さん: |
でも、低い理由って子供たちのせいではないですよね。急に「選挙権あげるから投票に行って下さい」って言われても、誰に投票したらいいのかわからないし、戸惑いの方が大きいはず。私たち大人の責任だと気づいてハッとしました。 小さいうちから社会の仕組みや世の中がどうなっているのかを知り興味を持っておく必要があり、その前提があってはじめて18歳になった時に自分自身で考えられるのだろうと思います。だから、小学生のうちからゲームを通して学び、学校だけでなく家庭からも社会で生きる力を育てられたらと思っています。 |
平田: |
ここまでお話をさせていただいてライフ・リテラシーゲームを作成した想いは、「まずは社会の仕組みを知って欲しい。そして自分とのつながりに気づき、その先にある政治や選挙なども自分ごととして考えて欲しい」ということですね。 |

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